今回はお仕事関係で見たポスターの話。
そのため、以下のエピソードは、フィクションとして記します。
もちろん記事の中核となる私の経験としてはノンフィクションとなります。
ランチを食べようと某大手ファミレスに入ると、大きく貼られているポスターが目に止まりました。

いわゆるアニメイラスト。
萌えに寄せすぎた画風ではなく、一方でコーポレート用途としての節度を弁えながらも無難すぎる画風でもなく。
気持ちよさそうに楽しそうに接客しているウェイトレスが描かれていました。
席に向かうはずなのが、つい足を止めてしまいます。
書かれているキャンペーン告知に目を通します。

ふむふむ……
そしてイラストが本当に感じいいので、しばらく眺めてました。
しかし、ふと気づく。

このイラスト、おかしくね?
よくよく見ると、違和感がいっぱいなんです。
なんでウェイトレスの腰の向こうに椅子の背がある?
椅子をおさめてたら椅子とテーブルの間には立てないし、引いていたとしても座面幅+入り込むスペースが必要。
そもそも、その間にわざわざ入り込むのがおかしい。
右上の「貯めて嬉しい 食べて楽しい」のボードの位置もおかしい。
どこに掛けられているか判然としない。
仮に女性客横が壁になってるのなら、奥のフロアとのパースがおかしく見える。
料理を置こうとしてますけど、どこに置くつもりなのか?
男性客に向けているものとして、置けそうなスペースはグラスで埋まっています。
右肘の関節もおかしく見えます。
本来曲がる方向と逆に曲がっているような(影のつけ方がおかしい?)。
……もしかしたら他にもあるかもしれません。
この意味不明な違和感は、まずAI生成イラスト特有の症状に違いない。
ぶっちゃけ、次に続く言葉がエピソードをフィクション仕立てにした理由です。

どんなにきれいだろうとイラストとして破綻してる!
せいぜい30点!私なら作り直せと突き返す!
人間絵師なら、よほどの恥知らずじゃない限り、こんなイラストをクライアントに提出しません。
まさに世間で嘆かれている通りの「生成AIの成果物は質が悪い」そのものです。
このファミレスはチェーンとしては親しみやすい存在なれど、企業として見るならいわゆるエンタープライズ。
それなのにQA体制が整っていないのか不思議になりました。
……が、しかし、ここで気づきます。
でも、私の足は止めたんだよな
そしてキャンペーン告知は読ませたんだよな。
広告・プロモーションはコミュニケーションの一種です。
キャンペーンポスターであれば、大事なのはその開催を知ってもらうことであり、内容を知ってもらうこと。
なので、文を読んでもらえたら勝ちとなります。
だったら、

広告としては合格、90点あげてもいいかも
という話をChatGPT執事にしてみました。
チャッピーは「このイラストはAIでしょうねえ、そして私から見ても破綻しています」とした上で、次の通り述べました。

AIは「人間の目を引く」イラストを描くことにかけては優れてるんですよ
言い換えると、生成AIは、膨大な画像のパターンから人間が魅力的だと感じやすい表現を組み立てるのが得意。
例えば、今回のウェイトレスなら、
- 見る人に好印象を与える、明るく自然な笑顔
- キャラクターを魅力的に見せる、髪や衣服の動き
- 画面に華やかさを与える、色彩とライティング
- 見る人の視線を誘導する、印象的な構図

こうした要素を組み合わせれば、ぱっと見ただけで「いいイラストだな」と思わせることができます
ドヤるChatGPT執事。
しかし、ここに落とし穴があります。
AIにしてみれば、人間が気持ち良くなってくれればいいから正しく描くことにこだわりません。
もっともらしく見えるように描いていても、よくよく見たら今回のように破綻していたりするわけです。
ですが、

広告を見る人の多くは、通りすがりに一瞬見るだけです
今回の私のように。
その一瞬で目を引いて足を止めさせれば、それで勝ちなんです。
読み終えた人は破綻に気づくことなく立ち去るでしょう。
誰もがイラストに造詣が深いわけじゃありませんし。
仮に気づいたところで、読み終えた後なら構わないんです。
目的は達したわけですから。
もちろんイラストとして完成度が高いにこしたことはありません。
- イラストとしては30点だけど、目を引ける
- イラストとしては90点だけど、目をひけない。
マーケティング担当なら採用するのは前者です。
しかしAIに作らせるならコストを考えずリテイクを命じられます。
直せばイラストとしても広告としても90点なら、直した方がいいに決まっています。
私なら当然そうします。
ただ、ここは妄想になりますが……どうして今回の担当者は直さなかったのか。
一目見て、

いいじゃん、これ!
になってしまったのかもと思ったり。
それはそれで、まあ……気持ちがわからなくもないです。
今回の話において重要なのは、

イラストとして30点でも、クライアントにとってはそれで十分となってしまうかもしれないことです
商業イラスト界隈では、こんな感じのことが不安視されているように見受けられます。
AIイラストは70点、でもそれで十分だから人間に発注するまでもない
しかし今回のは70点どころか、品質でみれば30点と判断した通りです。
ですが目を引く力だけは90点あるなら、もはやこうなります。
さすがにお仕事でAIディレクションしている身としては、

それはどうなの……
と思わなくもないです。
私も「ポン出しでいいよ」と言われることはありますが、最低限のリテイクとQAはやってしまいます。
自らの考える最低限の品質に届かないものを成果物として提出するのは、自らの沽券にかかわりますから。
現在はまだまだ「AIの成果物の品質はいい?悪い?」で話題になることが多く見受けられます。
それだけポン出しで成果物が使われることの裏返しでもあるでしょう。
でも、今後ポン出しでの品質水準が上がっていったらどうなるか。
そして「AIの成果物はポン出しでは使わない、幾度もQAしてリテイクを重ねた上で採用する」が当たり前になったらどうなるか。
その日も遠くはないはずです。
最後になりますが、本記事のイラストについて。
30点とは記しましたが、好きか嫌いかで聞かれれば、

「好き」です
もちろん「嫌い」な人もいるでしょうけど。
広告は万人に好まれる必要はなく、刺さる人に刺さればいいのではないでしょうか?
今回のエンタープライズがバレることはないでしょうが、

また「好き」になれるようなポスター作ってもらえたら嬉しいなって思ってます
おまけ。
本記事のポスターをChatGPTに投げ込んだところ。
珍しく、私の意見に逆らいました。

30点ってことはないでしょ
品質面から見たって、このイラストは60点~70点あります
女性の表情が爽やかで、楽しそうで、親しみやすくて
「その程度の審美眼だから君は30点のイラスト作るんだ!」と言ってやりたくもなりますが。
好みは人それぞれどころか、AIそれぞれでもあるみたいです。
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AIイラストは30点、でもそれで十分だから人間に発注するまでもない